どうして虫歯になりやすいの?

虫歯になる原因として、
①汚れが残っている
②甘いものをよく食べる・飲む
③酸っぱいものをよく食べる・飲む
④炭酸飲料をよく飲む
これらが主なものとして挙げられます。

その他、
⑤歯ぎしりや食いしばりで歯に亀裂が生じている
⑥詰め物や被せ物の接着材に寿命がある
というのもありますが、⑤と⑥についてはまたの機会に記載します。

①は歯を磨かないと虫歯になるよ、②は甘いものばかり食べると虫歯になるよと、子供の頃からよく耳にすると思いますが、汚れの中の細菌が甘いものを分解して酸を作り、歯を溶かして虫歯を作るというのが実際です。一方、③と④はあまり知られていないことが明らかになりました。

③は黒酢やリンゴ酢が体に良い、みかんやレモンでビタミンCを取ろうと積極的に摂取されている方が多く、確かに体には良いようです。しかし、すっぱいものはpHが低い(酸とアルカリの関係で、pHが低いほど酸性が強い)という傾向があり、下図のように歯の表層のエナメル質はpH5.5で、歯の内層の象牙質はpH6.3で溶けてしまいます。酸は歯を溶かします!pH1.1は胃酸レベルですが、包丁をも溶かすことがあります→鉄をとかす温泉の湯 | NHK for School

④は炭酸水が体に良いと、近年炭酸ブームがあったかと思います。私自身も炭酸泉の入浴が大好きで、炭酸の健康効果は確かに実感できます。しかし、炭酸もpHが低いため、酸っぱいものと同様に歯を溶かします。さらに、そこに砂糖が入っていると、②の虫歯の原因と合わさって、より歯を溶かすことになります。

歯は毎日溶けているものの、唾液はその弱アルカリ性で酸を中和したり、溶けた歯を戻そうとする修復作用があります。歯が簡単に溶けてなくならないのはそのためです。

↓神経質になり過ぎる必要はありませんが、だらだら食べをしない、食べた後に水で口をすすぐなど、歯に対する注意が必要です。磨き残しは×!

メンテナンスの間隔はどうやって決まるの?

メンテナンスの意義として、
①治療終了後の良好な状態を維持する
②歯周病や虫歯は再発性なので、定期的に管理する
③早期発見・早期治療で、虫歯が浅いうちに小さな治療で済ませる
④除去しきれていない汚れを発見・除去する
⑤フッ化物の塗布により、虫歯に対する抵抗性を高める
⑥顎関節に起因するしみや痛みなど、長期的に注意が必要な症状を管理する
⑦状態の悪い歯を無理に残したので、悪化症状が出ないか経過を観察する
⑧歯石が付きやすいので、定期的に除去する
⑨子供の歯の生えかわり時期で、速やかなフッ化物塗布やシーラントに備える
これらが挙げられます。

虫歯・歯周病になりやすいかどうかは、歯磨きがしっかりできているかどうかで大きく左右されます。メンテナンスでは、磨けていない部位の確認と説明を行い、清掃を行った上でフッ化物を塗布します。
ただし、毎月メンテナンスに通っていたとしても、それ以外の29日間、磨けていない部位に汚れがずっと残っていたのではいずれ必ず虫歯になりますので、自分で歯をきちんと磨けるようになるということが虫歯・歯周病予防の大前提です。

↓乳歯の歯並びは良いが、永久歯はきちんと並ぶだろうか??

歯を削りたくない!虫歯って本当に治療しないとダメ?

歯医者次第で治療するかしないかの判断が分かれます。
治療を勧める基準として、
①レントゲン上で虫歯が神経に迫っている
②歯に痛みやしみを感じており、日常生活に支障がある
③歯の一番硬い層であるエナメル質がなくなっている
④虫歯で神経が死んでおり、歯ぐきが腫れている
⑤虫歯で歯全体の色が変色している(虫歯が大きい)
⑥見た目をきれいにしたいという希望がある
⑦ホワイトニングを希望する場合で、薬液が虫歯の部分に入る恐れがある
これらが挙げられます。

表面だけや入り口だけの虫歯は、削らずに進行を抑制することが可能であるため、削らないことをお勧めします。また、何十年と掛けて進行している虫歯は、進行そのものが遅いと考えられるため、これも治療する必要が少ないでしょう。
治療するかしないかを最終的に決めるのは患者さん自身であるため、治療のメリットとデメリットの説明を受けた上で、どちらが良いか考えていただければと思います。

↓歯の表面は少し溶けていますが、常にこれだけしっかり磨けていれば、小さな虫歯はほとんど進行しないでしょう。

親知らずは抜いた方が良いの?

親知らずも一本の歯ですので、基本的には残した方が良いのですが、当院では以下の基準で抜く選択をお勧めしています。
①他の歯と比べて全く磨けていなくて、虫歯になっている
②進行した虫歯になっており、治療が不可能である
③もう片方の親知らずが生えて来ないために、歯ぐきをかんで痛い
④炎症を繰り返し、膿が出る経験を何度もしている
⑤横向きに埋まっており、手前の歯との間に汚れが詰まって取れない
⑥手前の歯を溶かしている
⑦歯周病になっており、治療器具が届かず治療できない

しっかり磨けている親知らずは残すべきです。また、ある程度磨けている治療可能な親知らずは、治療して残すことをお勧めします。

↓親知らずに関しては、残すことが必ずしも正解とは限りません。ご相談いただければ詳しく説明いたします。

左上の歯が、どれかわからないけど痛い!!

よくある訴えですが、実際の流れに沿って原因を特定していきます。
①いつから痛いのか
②常に痛いのか、ときどき痛いのか
③痛みに波はあるのか
④どれくらい痛いのか
⑤どの歯の辺りが痛いのか
⑥かむと痛いのか
⑦物が当たるだけで痛いのか
⑧冷たいものはしみるのか
⑨熱いものはしみるのか
これらの中から症状についてお尋ねします。

その後、お口の中を確認していきますが、
①深い虫歯があるのか
②神経を取った歯があるのか
③歯ぐきの腫れがあるのか
④膿は出ているのか
⑤歯が割れていないか
⑥レントゲンで異常が認められるのか
⑦本当に左上に原因があるのか
⑧本当に口の中に原因があるのか
⑨歯ぎしりや食いしばりの癖がないか
これらについて検査します。

原因は必ずしも一つではなく、二つ以上から症状が出ていることもあるため、どの原因を真っ先に治療すべきなのか、優先順位を考えて説明を行います。

↓神経の炎症、歯ぐきの腫れ、骨の炎症、激痛、顔の腫れがほぼ同時に出てくることも。

保険の被せ物と保険が利かない被せ物、どっちが良いの?

保険の被せ物として①白いプラスチック(CAD/CAM冠)と②銀歯(金銀パラジウム合金)を、保険が利かない被せ物として③ジルコニア冠をそれぞれの長所短所で比較して考えます。

①の長所・・・銀歯と大差ない金額で歯を白くできる、再び虫歯になったときに色で判別しやすい
①の短所・・・たわみにより外れやすい、疵が入ると着色や汚れが付きやすくなる、噛み割ることがある、残っている歯の状態で保険適応外となる場合がある、ブリッジなどの歯を連結する治療には使えない

②の長所・・・銀ピカである、強度が高く割れることはない、ブリッジなどの歯を連結する治療に大いに役に立つ、
②の短所・・・再び虫歯になったときに色やレントゲンで判別困難である、金属の味がする、味がするのはイオン化しているせいで汚れが付きやすい、金やパラジウム相場の上昇に伴い治療費が上がってきている、金属アレルギーの原因となり得る

③の長所・・・歯の見た目を自然かつキレイにできる、陶器のイメージでツルツルしているから汚れが付きにくい、強度が高く割れることはほぼない、ブリッジなどの歯を連結する治療に利用できる、再び虫歯になったときに色で判別しやすい
③の短所・・・高額である、本来の歯よりも硬すぎる、ブリッジなどで強度不足のため適応外となる場合がある、虫歯にならないと錯覚させる

要点をまとめると、
①のプラスチック関しては、見た目に白くなるが割れる外れる
②の銀歯に関しては、ガッチリ噛めるが再び虫歯になると厄介
③のジルコニアに関しては、美しくなるがとにかく高い
このように比較できます。

どのような治療をしようとも歯がきちんと磨けていなければ、普通の歯と同じようにまた虫歯になります。ジルコニアを入れることの利点としては、虫歯になりにくくすることと、もう二度と虫歯にしないぞという自分の意識を高めることではないでしょうか。再治療のリスクを下げたいのであれば、ジルコニアが良いと言えるでしょう。

↓基本的にこちらから保険外の治療はお勧めしません。ご希望でしたら詳しく説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

根っこ(神経)の治療は前にしたはずなのに、なんでまた悪くなるの?

歯の根っこの治療に関しては、再発を起こす原因を考えていきます。
①神経を取った歯がまた虫歯になった

②歯の中にしっかり薬が詰まっていなかった
③以前の治療で十分に治癒していなかった
④壊死した神経の取り残しがあった
⑤根の形が複雑で、十分な治療がそもそも不可能だった
⑥噛む力が異常に掛かり過ぎた
⑦虫歯の取り残しがあった
⑧根っこにひびが入った、または根っこが割れた
⑨根っこの病巣が大きすぎて、そもそも治る見込みが少なかった
⑩歯の根っこに見落としがあった
代表的にはこれらが挙げられます。

さて、①は単純にまた虫歯になったわけですが、神経がないことで虫歯の存在を自覚することは難しいため、ずいぶん進行してから気付くことになります。②は薬が十分に詰まっていないことで雑菌が繁殖し、再び状態が悪化したものです。ただ、神経を途中で切断して残すという治療法があるため、それが結果的に失敗したという場合も考えられます。③は症状が充分に消えていない段階で最後のお薬を詰めたため 、その後噛んだ痛みや触った痛みが消えないというものです。④は神経の取り残しがあった場合に、後から壊死した神経が異物として感染を引き起こすものです。⑤は根っこの形が大きく曲がっていたりして、器具を届かせられない場合が考えられます。⑥は噛む力が異常に掛かることで、根っこの周りの骨が溶けてしまうものです。⑦はそもそも虫歯が残っていた場合です。⑧は根っこにひびが後から入った場合や、もともとひびが入っていた場合です。ひびのある歯は治りにくいです。⑨はレントゲン上で歯の根っこの先に黒い巨大な影が見える場合です。ある程度の大きさを超えると普通の治療では治りません。⑩は肉眼で治療をしている場合によくあることで、本来治療すべき根っこを見落とすことで治癒しないというものです。
神経のある歯はむし歯が進んでくると、しみや痛みで虫歯の存在を自覚することができます。しかし、神経がないと虫歯に対するセンサーがなくなり、骨の中まで進行しないと症状が出ません。極力神経を残すべきなのはこのためです。また、神経を取った歯は栄養を得られなくなることで、年々脆くなっていきます。神経を取った歯ほど割れやすくなるのはこのためです。さらに、割れないまでもひびが入ることはよくあり、ひびが入ると割れる方に徐々に進んでいき、いつかは割れます。
歯の根っこは複雑な形をしていることの方が多く、治療が100%できないことはある意味宿命とも言えます。それでも、一般的に適切と考えられる治療を行うことで、多くの場合は治癒に向かいます。加えて、ルーペやマイクロスコープを使用することで、限りなく見える状態で治療をすることが、より治癒への可能性を高めます。
どんなに上手な先生が治療しても、根っこの治療の成功率は7割を切ると言われています。普通の治療で治らない場合に、外科治療で治すという手段が残されています。そして、それでもダメな最後の最後に抜歯となるわけです。

根っこの状態が悪くなるまでには、年単位を要してきたことがほとんどです。根っこの治療というのは、歯という原発巣を残した状態で治療を行う治療であり、転移巣である骨の中に薬剤を到達させていきます。虫歯は歯を溶かす一方で骨も溶かすため、レントゲン上で骨が溶けているほど歯も溶けていることがほとんどです。年単位で悪くなってきたものが僅か1回、2回の治療で短期間に治るでしょうか?原発巣である歯を抜いて、病巣をまるごと除去するのであれば話は別でしょうが、歯を残しつつ治療するのであれば、1回で治ることはあり得ません。

治療が成功したかどうかは、5年間無症状、かつ、レントゲン上で異常が認められないまたは異常所見が拡大していない、というのが一つの基準でしょうか。

↓一見問題ありそうな治療でも問題なかったり、しっかり治療しているようでも問題あったりと、とても奥深い根っこの治療。下図は1年経過症例。真に治ったかどうかは数年経過してみないと判らない。

歯周病ってなに?歯石ってなに?

歯周病という言葉はテレビCMでもよく耳にするでしょうが、平たく言うと歯ぐきの骨が溶ける病気です。虫歯は歯を溶かす病気ですが、歯周病は骨を溶かす病気です。重要なポイントとしては、菌がどこかから感染症のようにやってくるのではなく、自分の口の中にもともといる菌(口腔常在菌)が引き起こすところです。

口の中には誰でも細菌がいます。食べ物を食べると、食べかすに細菌が付着します。多くの場合は歯磨きで汚れはなくなりますが、汚れが取り切れないと汚れは菌とともに歯垢という状態になります。歯垢は唾液中のカルシウム分と結合して歯石になります。

歯石の中には細菌が含まれているため、細菌同士の相互作用で特に悪さをする菌を増やしたり、毒素を出したりして歯ぐきに炎症を起こします。炎症は歯ぐきの肉の部分に収まらず、その下の骨にまで及ぶことで骨が溶けていきます。肉の部分は腫れて膿が出るし、骨が溶けて歯がグラグラする、これで歯周病です。

↓汚れがある程度長期間付着して、歯周病の原因となる細菌が定着すると歯ぐきの骨が溶けるという理解でしたが、下の論文から示唆されるのは、汚れは短期間でも歯ぐきの骨を溶かす原因になるよというものでしょうか。興味深い内容です。

Gram-positive bacteria cell wall-derived lipoteichoic acid induces inflammatory alveolar bone loss through prostaglandin E production in osteoblasts | Scientific Reports (nature.com)


レントゲンって必要なの?

歯医者に行くと必ずと言ってよいほどレントゲン(デンタルX線写真、パノラマX線写真、歯科用CTなど)を撮られる、そんな経験が私にもあります。歯医者がレントゲンを撮る理由は何かを、以下に挙げます。

①しみや痛みの原因となっている歯を特定するため
②虫歯の大きさを把握するため
③虫歯によって神経が死んでいないか確認するため
④腫瘍や嚢胞が存在しないか確認するため
⑤悪性腫瘍の所見がないか確認するため
⑥親知らずの存在と、向きや顎の神経との位置関係を確認するため
⑦歯周病の進行度を確認するため
⑧目で見て特定できない虫歯を発見するため
⑨埋伏歯や先天欠損歯を確認するため
⑩複雑な形をしている神経の形態を把握し、治療の精度を上げるため
⑪外科手術に先立って、術野の決定と治療予測を立てるため
⑫保険診療の定めに従い、必要な請求のために行う

診断なくして治療なしが原則ですので、診断のためには検査が必要です。検査には視診、打診、問診、触診、温度診などがあり、そこにX線診が入ります。確実な診断のためにX線写真を撮るというのが本来の目的です。

当院での実際としては、
①虫歯が全くない方には撮らない
②歯石がほとんどない方には撮らない
③乳歯抜歯に際し、後継永久歯がはっきり見えている場合は撮らない
④妊娠中の方は撮らない
⑤小児は基本的に撮らない

しかし、その例外として、
①虫歯はないが、親知らずの訴えがある場合は撮る
②歯石はないが、撮って確認してほしいという訴えがあれば撮る
③乳歯の下に永久歯があるか確認できない場合は撮る
④腫瘍や嚢胞など、放置するリスクが胎児への影響を上回る場合は説明する
⑤小児で先天欠損歯が疑われる場合、説明の上で撮るように勧める

説明なくX線を撮ることはありません。もし少しでも疑問があれば詳しく説明しますので、気軽にお尋ねください。

↓12歳の小児でX線撮影を行った例。もう抜けていてよいはずの乳歯部の歯ぐきが腫れている。あっさり抜いてしまいがちだが、後継永久歯がないとX線から判明。抜くリスク、抜かないリスクを考える必要がある。歯医者ごとにどう判断するか?

外科処置で治すって?

歯の根っこの治療は、根っこの中を治療すれば多くの場合で治っていきますが、普通の治療では治らない場合がいくつかあります。
①根っこの先に嚢胞(膿のたまった袋)が存在する
②根っこの途中に穿孔(穴)がある
③治療器具が折れ込んでいる
④歯にひびがある
⑤歯の中から十分に治療が出来ない

①の場合は何回根っこの治療をしても膿が止まらなかったり、いつまでも痛みが引きません。②の場合は治療の失敗により穴が空けられていることや、虫歯を取った結果として穴が空く例があります。③の場合は治療器具が耐久限界で折れて、そのまま歯の中に残っている状態です。④の場合は金属の土台が歯に打ち込んであるときに、土台がくさびとなり歯を割ってくることがあります。⑤の場合は歯の根っこの形が複雑すぎて、治療器具を十分に扱えないときです。

普通の治療で治せない場合に、次の手段として外科処置を選びます。歯の中からの治療が不可能なのであれば、歯の外から治療しようというものです。「歯ぐきの側から~」、「歯ぐきを切って~」、「骨を削って~」という説明になってしまうため、どうしても怖いというのが第一印象ですが、歯を完全に抜歯してしまう前になんとか歯を残そうとする治療法ですので、大切な治療の選択肢です。

↓歯根端切除術後、1年が経過した症例。無症状のまま経過良好だが、本当に治ったかどうかは数年経過してみないとわからない。